研究概要 |
(1)ヒト肺癌細胞株でのヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の感受性 20種類のヒト肺がん細胞株(15種類の非小細胞がん、5種類の小細胞がん)に対してHDAC阻害剤TSAとFK228ともin vitroでナノモル単位のIC50値で肺がん細胞株を抑制し、すべて急峻な増殖抑制曲線を呈した。また、FACSにてアポトーシスを誘導していた。 (2)cDNAマイクロアレイでのHDAC阻害剤の感受性因子同定の試み 20種類のヒト肺がん細胞株それぞれの遺伝子発現プロファイルを、cDNAマイクロアレイを用い、約9,000遺伝子について検討した。遺伝子発現強度とTSAとFK228のIC50値との相関係数を算出しクラスター解析を行ったところ、TSAとFK228はともに肺がん治療に汎用される9種類の抗癌剤(CDDP、CBDCA、VP-16、SN38(CPT-11)、Gemcitabine、Vinorelbine、Paclitaxel、Docetaxel、SM5887)とは独立したクラスターを呈した。また、HDAC阻害剤に対する感受性および抵抗性規定遺伝子の候補を複数個見出した(抵抗性と相関する遺伝子の1つにr=0.636のシスタチン3)が、real-time PCRでその遺伝子発現とIC50値との相関を再検討したところ相関係数は下がり有意なものは認めなかった。 (3)小肺癌細胞株に対するHDAC阻害剤によるアポトーシス誘導に対するアデノウイルスRb(Ad-Rb)の効果 小細胞肺癌細胞2株に対してAd-Rbは増殖抑制を示すだけであった。HDAC阻害剤によるアポトーシス誘導をRb遺伝子の発現が増強させるか拮抗するかどうかを同時投与により検討した。ChouとTalalayのcombination index法で解析した結果、コントロールのAd-LacZとほとんど同等の相加効果〜相乗効果を示し、拮抗作用を示さなかった。
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