研究課題/領域番号 |
15590839
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大高 徹也 東北大学, 医学部, 教授 (70271921)
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研究分担者 |
佐藤 博 東北大学, 病院・講師 (60215829)
中山 謙二 東北大学, 病院・助手 (90344671)
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キーワード | 膜性増殖性糸球体腎炎 / IgA腎症 / サイトカイン受容体 / シグナル伝達蛋白 |
研究概要 |
今年度は、昨年に引き続き膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)、IgA腎症(IgAN)を対象に、糸球体細胞での各種サイトカイン受容体発現および細胞内シグナル伝達系タンパク発現を免疫組織化学的に検出し、それらの糸球体内局在や相互の関連を検討した。この目的で、MPGN8例、IgAN8例および、正常コントロール4例を対象に、以下の各種蛋白発現を免疫組織学的に検討した。(1)サイトカイン受容体:TGFβ receptor type I(TGFβRI)、PDGF receptor alpha(PDGFRα)、FGF receptor type I(Flg)(2)関連シグナル伝達蛋白:ERK1/2、phospho-ERK1/2(pERK1/2)、Smad2/3。 結果 A:染色結果 1.MPGN:(1)サイトカイン受容体の発現:メサンギウムにTGFβRI、PDGFRα、Flgの発現が認められた。(2)糸球体におけるシグナル伝達蛋白発現:メサンギウムにERK1/2の発現が、メサンギウム細胞核周にp-ERK1/2の発現が認められた。Smad2/3については強度陽性の細胞が糸球体内に散見されたが、細胞形態よりメサンギウム細胞ではなく浸潤細胞の一部が染まったものと考えられた。2.IgAN:(1)各種サイトカイン受容体の発現:MPGNと同様メサンギウムにTGFβRI、PDGFRα、Flgの発現が認められた。(2)糸球体におけるシグナル伝達蛋白発現:メサンギウムにERK眠1/2の発現が、メサンギウム細胞核周にp-ERK1/2の発現が認められた。Smad2/3については強度陽性の細胞が糸球体内に散見されたが、細胞形態よりメサンギウム細胞ではなく浸潤細胞の一部が染まったものと考えられた。3.CTRL:(1)各種サイトカイン受容体の発現:メサンギウムにはTGFβRI、PDGFRα、Flgいずれも陰性であった。(2)糸球体におけるシグナル伝達蛋白発現:メサンギウムにおけるERK1/2発現、糸球体細胞核内におけるp-ERK1/2発現は極めて弱く、Smad2/3陽性細胞もわずかであった。B:サイトカイン受容体とシグナル伝達蛋白発現との関連 1.サイトカイン受容体とERK1/2、p-ERK1/2の関連:TGFβRIとFlg(R=0.717、P<0.01)、TGFβRIとERK1/2(R=0.796、P<0.005)、FlgとERK1/2(R=0.851、P<0.001)、Flgとp-ERK1/2(R=0.644、P<0.02)の間に、それぞれ有意の正相関が認められた。2.Smad2/3と各種蛋白発現の関連:TGFβRIとSmad2/3(R=0.839、P<0.02)、FlgとSmad2/3(R=0.874、P<0.01)、ERK1/2とSmad2/3(R=0.900、P<0.01)、p-ERK1/2とSmad2/3(R=0.796、P<0.02)の間に、それぞれ有意の正相関が認められた。 以上の結果より、MPGN、IgANのいずれについてもサイトカイン受容体TGFβRI、PDGFRα、Flgと関連シグナル蛋白ERK1/2、p-ERK1/2の発現が認められ、メサンギウム増殖における相互作用の存在が示唆された。2.Smad2/3陽性細胞は浸潤細胞である可能性が高く、増殖シグナル発現との間に高度の相関が見られ、浸潤細胞の分泌するサイトカインの関与が強く示唆された
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