アルドステロンは従来よりナトリウム・水貯留ホルモンとして知られているが、近年、直接的な心血管作用を有するとともに種々の腎疾患の病態・進展に関与する可能性が示唆されている。しかしながら、アルドステロンがいかなる機序を介して腎疾患の病態に関与するのかに関しては詳細は未だ不明である。腎疾患の進行には糸球体高血圧などの糸球体血行動態の異常が重要な役割を演じている。そこで我々は、糸球体血行動態の調節に重要な輸出入細動脈におけるアルドステロンの作用と機序を微小灌流法を用いて検討した。nMレベルのアルドステロンは両細動脈を濃度依存性に収縮させたが、感受性は輸出細動脈で高く、有意な収縮は輸出細動脈では1nMから、一方、輸入細動脈では5nMから認められた。しかしながら、輸入細動脈では内皮を除去するかNitric Oxide (NO)の合成を阻害するとアルドステロンの作用が増強し、生理的レベルである0.1nMで有意な収縮が認められた。アルドステロンによる収縮はいずれの細動脈においても投与後5分以内に認められ、non-genomicであると考えられた。このことは、アルドステロンによる収縮がスピロノラクトンで抑制されず、アクチノマイシンDやシクロヘキシミドで影響されないことからも裏付けられた。また、両細動脈においてアルドステロンによる収縮はPhospholipase C依存性であったが、輸入細動脈ではL型チャネルを介したカルシウムの流入が、一方、輸出細動脈ではT型カルシウムチャネルが重要であると考えられた。以上、アルドステロンは輸出細動脈を収縮させて糸球体内圧を上昇させることで、腎疾患の病態に関与する可能性が示唆された。また、内皮障害が存在する病態下では、アルドステロンは輸入細動脈を収縮させて腎血管抵抗を上昇させることで、高血圧の発症または元々存在する高血圧の増悪に関与する可能性が示唆された。
|