我々は平成15年度にアルドステロンがnon-genomicな機序を介して輸出入細動脈を収縮させることを明らかにした。その研究の中でアルドステロンのnon-genomicな血管収縮作用とミネラルコルチコイド受容体を介して生じる緩徐な作用(genomic action)の間にinteractionが存在する可能性が示唆されたが詳細は不明であった。そこで本年度はこのinteractionの可能性について検討を行った。具体的には1-10nMのアルドステロンで1時間輸出入細動脈を前処置してからnon-genomicな血管収縮作用を検討したが、残念ながらこの前処置ではNO合成阻害などのgenomic actionは引き起こされず、genomic actionとnon-genoic actionのinteractionは観察されなかった。そこで文献的検索を行ったところ、genomic actionを誘発するには1時間では不十分で3時間程度の前処置が必要であることが判明した。現在、輸出入細動脈を単離した後、生理的(pMレベル)〜病的状態で認められる高濃度(nMレベル)のアルドステロンを含む溶液で3時間以上灌流してからnon-genomicな血管収縮反応を検討することで、genomic actionとnon-genomic actionのinteractionの可能性を検討している。 さらに、我々はアルドステロンがその病因に関与すると考えられている食塩感受性高血圧の病態生理を検討する目的で、Descending Vasa Recta(DVR)の単離灌流実験を行うことを計画しているが、ウサギのDVRは問題無く単離できることが確認された。今後、アルドステロンを含む種々の血管作動物質に対するDVRの反応性とその機序を解明し、食塩感受性高血圧の病態生理に関する新知見を得たいと考えている。
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