アルドステロンは従来よりナトリウム・水貯留ホルモンとして知られているが、近年、種々の腎疾患の病態・進展に関与する可能性が示唆されている。しかしながら、アルドステロンがいかなる機序を介して腎疾患の病態に関与するのかに関しては詳細は未だ不明である。腎疾患の進行には糸球体高血圧などの糸球体血行動態の異常が重要な役割を演じている。そこで我々は、糸球体血行動態の調節に重要な輸出入細動脈におけるアルドステロンの作用と機序を微小灌流法を用いて検討した。その結果、(1)アルドステロンはnon-genomicな機序を介して両細動脈を収縮させること、(2)輸入細動脈では内皮由来のNOがアルドステロンの血管収縮作用を減弱させているためアルドステロンに対する感受性は輸出細動脈で高いこと、(3)内皮機能障害を伴う輸入細動脈では生理的濃度のアルドステロンが収縮を引き起こすことが明らかとなった。以上の結果より、アルドステロンは輸出細動脈を収縮させて糸球体内圧を上昇させることで腎疾患の病態に関与するという可能性が示唆された。また、内皮障害が存在する病態下では、アルドステロンは輸入細動脈を収縮させて腎血管抵抗を上昇させることで高血圧の発症または元々存在する高血圧の増悪に関与するという可能性が示唆された。さらにこれらの研究を遂行する中で、アルドステロンのnon-genomicな血管収縮作用とミネラルコルチコイド受容体を介して生じる緩徐な作用(genomic action)の間にinteractionが存在する可能性が示唆されたため検討を加えたが、詳細は不明であった。今後このinteractionの可能性について更なる検討を加えていく予定である。
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