研究課題/領域番号 |
15590841
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山縣 邦弘 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 助教授 (90312850)
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研究分担者 |
小山 哲夫 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (80111384)
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キーワード | 巣状糸球体硬化症 / ミトコンドリア / ミトコンドリアDNA / 酸化障害 / 欠失変異 / 糸球体上皮細胞 / ミトコンドリア蛋白 |
研究概要 |
本年度は主にラットへのピューロマイシン(PA)投与により形成されるネフローゼ(NS)、巣状糸球体硬化症(FGS)動物モデルにおいて、糸球体病変形成におけるミトコンドリア(mt)障害の関与を検討した. PA単回投与のNS期では、光顕上FGS病変をわずかの糸球体に認めたのみ(1%未満)であったが、複数回投与のFGS期においては、45.1%の糸球体にFGS病変をみとめた.電子顕微鏡所見では、糸球体上皮細胞の足突起の広範な癒合に加え、糸球体上皮細胞内のmtの形態異常を認めた.糸球体抽出蛋白質中のCOX-I/COX-IV比は、NS期では同週齢コントロールラットと同等であるものの、FGS期においては有意な低下を認めた.mtDNAの酸化刺激により増加するとされる、4834-bp欠失変異mtDNAはコントロールに比べ、NS期で16倍、FGS期で21倍増加したものの、正常mtDNAの1%未満をしめるのみであった.一方mtDNAのコピー数はNS期でコントロールに比べ2.4倍に増加したが、FGS期ではコントロールの34%まで減少していた.mtDNAコピー数を制御するmitochondrial transcription factor Aならびのその上位制御分子であるnuclear respiratory factor 1のmRNAの発現は、NS期において発現の増強があるもの、FGS期においては減弱していた. 以上の結果から、NS期においては、糸球体上皮細胞のエネルギー需要の亢進に伴い、mtDNAの複製刺激と同時にmtDNAコピー数の増加を認めるも、FGS期においてはmtDNAコピー数の減少と同時にmtDNAでコードされるCOX-I蛋白の産生減少が起こり、糸球体上皮細胞の機能維持が損なわれ、FGS病変形成が惹起されることが示唆された.
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