研究課題
基盤研究(C)
糸球体上皮細胞における分化と形態・機能維持におけるサイクリン依存性キナーゼ5(CDK5)について検討するために、まず、マウス糸球体上皮細胞障害モデルの開発を行った。米国国立衛生研究所より譲与されたrtTA/vprマウスは、podocinプロモーターを用いたtet-on systemにより、doxycyclineを投与することで、糸球体上皮細胞特異的にHIV-1アクセサリー遺伝子vprが発現する。我々はさらに片腎摘出を加えることにより、多量の蛋白尿を伴う、ヒトHIV腎症類似のcollapsing/cellular typeの巣状糸球体硬化症病変を短期間で作成するモデルを開発した。本モデルでは糸球体硬化の過程において糸球体上皮細胞の脱分化が見られる。このマウスにおいて、CDK5の発現を免疫組織学的に検討したところ、糸球体上皮細胞の脱分化に伴い、その発現が減弱、消失した。糸球体上皮細胞の分化マーカーである、WT1、synaptopodinなども同様に発現の減弱・消失を認めた。さらにCDK5に結合する蛋白ではあるが、CDK5のキナーゼ活性には蘭与しないcyclin D3についても検討したところ、Cyclin D3の発現も減弱・消失した。一方、細胞増殖マーカーであるPCNAの発現を認め、糸球体上皮細胞が細胞周期に入っていることが示された。また、これらの変化は、高度な蛋白尿は見られるものの、形態学的には光学顕微鏡的にはほとんど変化を認めない時期より見られていた。以上より、CDK5とその関連蛋白は糸球体上皮細胞の脱分化に伴い消失・減弱することが、vpr発現と片腎摘出によるHIV腎症モデルマウスでも確認され、CDK5とその関連蛋白が、糸球体上皮細胞の分化形態ならびに機能維持に関与していることが推測された。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (6件)
日本腎臓学会誌 47
ページ: 269
Nephrology 10 suppl.
ページ: A10
Journal of Japanese Society of Nephrology Vol.47(Abstract)
Nephrology Vol.10(Abstract)
ページ: A40