研究概要 |
平成15年度は,aldosterone(Ald)による血管平滑筋細胞(VSMC)Na/H交換輸送体(NHE)の調節機序の解明について研究した. 我々は,AldをVSMCに3時間,24時間投与すると,いずれもNHE活性が増加すること,3時間の作用は核を介さない作用,24時間の作用は核を介する作用であることを報告した(Kidney Int56:1400,1999).今回は,Ald投与3時間,24時間後のNHE亢進の機序を解明した.細胞内pH(pH_i)はBCECF-AMを用いて,NHE活性はNH_4Cl負荷と細胞外Na除去による細胞内酸性化後のNa依存性pH_iの回復速度と内因性緩衝力との積(J_H)によって求め,pH_iとJ_Hとの関係をAld投与の有無で調べた.Ald投与の有無に関わらず,pH_iとJ_Hとは負の相関がみられ,pH_iが増加するとJ_Hは低下した.また,Ald投与3時間,24時間後のJ_Hは,いずれもpH_iが6.10〜6.80と広い範囲でコントロールのそれよりも増加し,かつ0.05〜0.3pHアルカリ側にシフトした.最大J_Hも,コントロールに比べ有意の増加を示した.Ald投与3時間,24時間後のNHE亢進作用は、いずれも最大J_Hの増加と,NHEに対するpH_i感受性のアルカリ側へのシフトによることが明らかになった.さらに,細胞外Na^+濃度を段階的に変化させたときの最大反応速度(Vmax)はAld投与3時間,24時間後いずれも増加したが,Michaelis定数(Km)は変化しなかったことから,H^+親和性は変化せず,膜に存在するNHE輸送体の数が増加することが示唆された.
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