研究課題/領域番号 |
15590859
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
林 松彦 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (60129608)
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研究分担者 |
浅井 昌樹 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (50317103)
門川 俊明 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (80286484)
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キーワード | 進行性腎障害 / Thy1.1腎炎 / DNA microarray / NFκB |
研究概要 |
抗Thy1.1モノクローナル抗体1-22-3単回投与では可逆性の腎障害を生じ、片腎摘出後に投与をおこなうと不可逆性の進行性腎障害を生じるが、腎障害進行因子同定のため、これらモデル動物の発現遺伝子差異を検討した。各腎障害ラットを作製後、1週から8週目に腎臓からRNAを抽出、オリゴマイクロアレイスライドにより、両群の遺伝子発現について解析をおこなった。各時期において両モデル動物腎臓で2倍以上の発現の差があった遺伝子は191あり、これらをクラスター解析した。8個のクラスターに分類され、1つのクラスターにはラミニン、コラーゲンタイプI、KIM-1、オステオポンチンなどを含み、腎障害の進行に伴い、不可逆性モデルに強く発現する遺伝群であることがわかった。このクラスターの中に含まれていたサイモシンβ10に関しては、これまで腎臓での機能は不明であり、さらに検討したところ、腎障害進行とともに間質に発現が増強することが明らかとなった。現在、その病態における役割を検討している。 以前、ラット腹腔内ウシ血清アルブミン大量投与により、蛋白尿を生じ、この蛋白尿により腎間質障害が惹起され、その過程においてNFκBが中心的役割を果たすことを示した。さらに、間質障害因子を特定するために、この腎障害モデルにおいて、変異IκBのアデノウィルスによる遺伝子導入を行い、腎間質のNFκB活性化を阻害した腎臓と、対照の腎臓の間で、DNA microarrayを用いて間質障害悪化因子、防御因子を同定した。その結果、防御因子としてclusterinが候補として同定され、腎における蛋白発現、mRNA発現ともに、変異IκBによる治療で増加し、免疫組織学的にもその増加が確認された。この蛋白はapoptosis抑制作用を有することから、何らかの形でこの作用を介して腎障害進行を抑制することが示唆され、現在、その詳細な機序を検討中である。
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