研究課題
基盤研究(C)
抗Thy1.1モノクローナル抗体1-22-3単回投与では可逆性の腎障害を生じ、片腎摘出後に投与すると不可逆性の進行性腎障害を生じる。腎障害進行因子同定のため、各腎障害ラットを作製後、経時的に腎臓からRNAを抽出、オリゴマイクロアレイスライドにより、遺伝子発現について両モデル間で解析をおこなった結果、2倍以上の発現の差があった遺伝子は191あり、これらをクラスター解析した。7個のクラスターに分類され、1つのクラスターにはラミニン、コラーゲンタイプI、KIM-1、オステオポンチンなどを含み、腎障害の進行に伴い、不可逆性モデルに強く発現する遺伝群であることがわかった。このクラスターの中に含まれていたサイモシンβ10に関して、さらに検討したところ、腎障害進行とともに間質に発現が増強することが明らかとなった。ヒト単球細胞THP-1細胞のマクロファージへの分化とともに発現が増強することとあわせ、流入マクロファージの活性化を介して間質障害に関与する可能性が考えられ、腎障害治療標的分子となりうるか検討中である。ラット腹腔内ウシ血清アルブミン大量投与により、蛋白尿を生じ、この蛋白尿により腎間質障害が惹起されるが、その過程においてNF-κBが中心的役割を果たすことが示されている。間質障害因子をさらに特定するため、この腎障害モデルにおいて、変異IκBαのアデノウィルスによる遺伝子導入を行い、腎間質のNF-κB活性化を阻害した腎臓と、対照の腎臓の間で、DNA microarray等を用いて間質障害悪化因子、防御因子を同定した。その結果、防御因子としてclusterinが候補として同定され、さらにレニン・アンジオテンシン系の遺伝子変化が示された。特に、間質障害によりアンジオテンシン変換酵素2型(ACE2)は減少を示し、NF-κB阻害により増加を示すことが明らかとなり、今後、ACE2を標的遺伝子とする進行性腎障害治療の可能性が示された。
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