研究概要 |
腎機能障害の進行と尿細管・間質障害の関連性について報告されているがその機序は不明である。特に蛋白尿の出現は腎機能低下と関連することが報告されているが、大量のトランスフェリンも尿中に排泄され一部は尿細管から再吸収されている。トランスフェリンに結合した3価鉄が近位尿細管で再吸収されることになるが、その尿細管への影響は酸化ストレスの増大を惹起することが想定される。平成15年度は腎機能障害と鉄代謝の関係についての予備調査として、ヒト由来でかつ比較的容易に採取できる多核白血球における鉄代謝を血液透析患者において測定した。血液透析患者などのサイトカインレベルが高い状態では、健常者に比し細胞への鉄取り込み蛋白であるtransferrin receptorは、遺伝子レベルおよび蛋白レベルともにその発現は増加しており、細胞からの鉄汲み出し蛋白であるferroportin 1の発現は低下していた。これらの結果より鉄輸送蛋白の制御異常が細胞内の鉄過剰の原因となっている可能性を明らかにした。平成16年度では、cysteine(Cys)およびhomocysteine(Hcy)は自己酸化により活性酸素を産生するが、遷移元素である銅(Cu)を追加することにより酸化ストレスを介して近位尿細管由来培養細胞に与える影響を検討した。Cys+Cuの条件下においては、control,Cys,Hcy,Hcy+Cuに比して高度の細胞障害性とTBARS増加が認められ、またこれらの増加はhydroxyl radicalおよび過酸化水素の産生増加と一致していた。CysとHcyではその尿細管細胞への障害性が異なり、特にCuの存在が酸化ストレスを介して細胞障害性に強く関与していることを明らかにした。今後は、ヒト近位尿細管上皮細胞(RPTEC)におけるtumor necrosis factor-α、interleukin-6、Angiotensin IIの鉄輸送蛋白および酸化ストレスと尿細管・間質障害の進展への影響について検討していく。
|