進行性の糸球体疾患の組織学的特徴は、その原因によらず糸球体内細胞とマトリックスの増加であり、この病変が進展の指標になる。最近になりTGF-βのセレプターの構造やSmadなどの情報伝達にかかわる蛋白あるいは活性化機序が明らかになってきた。また、in vitro、in vivoでの遺伝子導入の方法が確立され、我々もアデノウイルスをベクターとした遺伝子導入の方法を導入してきた。今回我々は、TGF-βの可溶性レセプターの遺伝子導入によるTGF-βの制御による治療の試みについて検討した。 TGF-βの可溶性レセプターの遺伝子導入によるTGF-βの制御 TGF-βには3種類のレセプターがあり、1型と2型が細胞内にセリンースレオニン活性をもちシグナル伝達に関与する。これらのレセプターの細胞外部分の遺伝子をヒトIgGのFc部分と連結させ分泌型のダイマーとしてアデノウイルスに組込み、筋肉細胞に導入すると、大量の可溶性レセプターが産生される。この可溶性レセプターは血中や組織中のTGF-βと結合し、その活性を阻害する。本実験ではTGF-β2型可溶性レセプターを間質線維化ラットモデルの筋肉細胞に導入し、病変におよぼす影響の差と治療への可能性を検索した。その結果、血中可溶性レセプターの濃度の増加とともに、尿管結紮1週間後の間質の線維化、マトリックスの蓄積、マクロファージの浸潤などの組織変化は抑制された。以上の結果より、TGF-β可溶性レセプターがin vivoにおいてもTGF-βの作用を有効に阻害し腎組織の線維化を抑制できることを示した。
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