G蛋白共役型受容体(GPCR)は、ゲノム解析により800種類以上の存在が推測され、ますます創薬のターゲットとなってきた。以前、私たちは、そのGPCRに属するアンジオテンシンII(Ang II)2型受容体(AT2受容体)には、自然活性があり、そのリガンドであるAng II非依存性に、アポトーシスを引き起こすことを報告した。今回は、Ang IIのもう一つの受容体である1型(AT1)受容体にも自然活性が存在するのかをAT1受容体の人工変異体を使用し検討した。その結果、AT1-N111G受容体が過剰発現した細胞系において、AT1受容体自体の細胞内シグナルは、細胞を肥大させる方向へ、その後にAng IIが結合したシグナルは、細胞を過形成の方へ誘導することが推測される結果を得た。このことにより、AT1受容体にもAT2受容体と同様に自然活性があることが推測された。これにより、各種AT1受容体拮抗薬(ARB)が、インバースアゴニズム作用があるかどうかについての検討が可能となった。そこで、AT1受容体が過剰発現した実験系において、このAng II非依存性の持続的自然活性(イノシトールリン酸産生やMAPキナーゼ系の活性化)を各種ARBが抑制するか(インバースアゴニスト作用を持つか)を検討した。その中である種のARBは、インバースアゴニズムを有していた。さらに、私たちは、あるAng IIアナログは、イノシトール産生系を活性化せずに、MAPキナーゼ系のみを活性化し、アナログによって細胞内シグナルの選択が可能であることがわかった。現在、さらに、検討を進めている。
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