今回、アンジオテンシンII(Ang II)1型(AT1)受容体がAng IIの結合無しに自然活性を持つことを見出した。また、ある種のAng IIアナログは、Gタンパク質依存性のイノシトール産生は増加させなかったが、EGF受容体を介したERKを活性化させ、受容体からのシグナルを選択できる可能性が証明された。さらに、AT1受容体とAT2受容体を介する作用は、細胞増殖や血管収縮などに対して拮抗的に働き、細胞内でシグナルがクロストークするといわれている。私たちは、AT2受容体には持続的活性があり、この持続的な作用がHomo-oligomerを形成しアポトーシスを引き起こしていることを証明した。また、このHomo-oligomerを形成する際には、ジスルフィド結合が重要といわれ、AT2受容体には、細胞外に4つのシスチンが存在するため、どのシスチンがHomo-oligomerに重要であるかを検討したところ、AT2受容体のC35とC290がそのHomo-oligomerの形成に関与し、受容体の構造変化は独立した関係であったことがわかった。本研究のように自然の持続活性を持ち、かつHomo-oligomerを形成することでシグナルを出す可能性を検討することは今までになされていなかった。また、細胞外のジスルフィド結合がHomo-oligomerを形成する際には重要といわれているが現在まで確たる証拠もなかったが、その点も証明することができた。さらに、RCAM法は、GPCRsに属する受容体の構造変化を捉える簡便な方法となっており、Homo-oligomerの形成過程の構造変化を捉えることができた。 これらの受容体活性化の分子生物学的機能解析は、臨床において頻繁に使用されているアンジオテンシンII受容体拮抗薬の作用を理解する上で非常に有用である。また、AT2受容体の自然活性の意義を探った今回の知見は、未知のリガンドが同定されていないGPCR(オーファン受容体)のリガンド探索やその機能と作用機構を探究や新規医薬品等への応用の一助となると考えられる。
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