研究課題
基盤研究(C)
これまでに、各種ヒト腎疾患や実験腎炎においてI型、III型、IV型collagenやfibronectin、lamininといった細胞外基質の発現亢進が生じることや、さらにこれらの受容体であるα1β1、α5β1、αvβ1などのintegrinの発現も同時に亢進することが報告されている。しかし、増加した細胞外基質とintegrinとの接着により活性化される糸球体細胞の細胞内シグナリングや遺伝子発現の変化についての報告はほとんどなされていない。今回我々は、各種ヒト腎炎や実験腎炎で見られる細胞外基質の増加が、integrinを介した細胞内シグナル伝達機構を活性化させ、ICAM-1やMCP-1などの腎疾患の進展に関わる遺伝子の発現に影響を与えうるかどうかを検討した。培養ヒトメサンギウム細胞において、β1integrin特異刺激抗体(mAb13)やfibronectinへの細胞接着による刺激がICAM-1やMCP-1の発現に及ぼす影響をFACScanやWestern blotting、RT-PCRなどで検討したところ、β1integrin刺激によりICAM-1、MCP-1の発現が亢進したが、Fas、VCAM-1の発現は影響を受けなかった。VCAM-1、ICAM-1、MHC classIによる刺激ではICAM-1の発現は変化しなかった。β1integrinによるICAM-1とMCP-1の発現はtyrosine kinase阻害剤とMEK阻害剤で抑制された。またβ1integrinによるICAM-1の発現はα2integrin阻害抗体により抑制され、α2β1integrinを介していると考えられた。さらに、α2β1integrinによるICAM-1の発現亢進はメサンギウム細胞と単核球の細胞接着を亢進させた。これらの結果から各種腎炎における細胞外基質の増加が、ICAM-1やMCP-1の発現を介し腎炎の進展に影響を与えている可能性が示唆された。
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