研究課題
MSAを含むシヌクレイノパチーの病態解明のためαシヌクレイン過剰発現細胞を作成して蛋白凝集物形成と細胞死の関連を検討した。ヒトαシヌクレインを神経芽細胞腫由来のSH-SY5Y細胞に導入した。確立したαシヌクレイン過剰発現細胞は、形態・増殖率ともに目立った変化を示さなかった。これらの細胞を酸化的ストレスに曝露すると細胞質内にαシヌクレイン陽性の凝集体が形成された。特に凝集体形成率の高かった鉄について更に検討を進めたところ、二価鉄のみならず酸化的ストレス誘導能に於いて非活性型の三価鉄についても同様の凝集体形成促進作用が認められた。他の酸化的ストレス存在下に三価鉄を追加曝露したところ、凝集体形成は促進されたが、このとき細胞死は抑制された。逆に鉄キレート剤の追加曝露で、凝集形成は抑制されたが細胞死は促進された。以上の結果は凝集体形成が酸化的ストレス曝露下の細胞に対して保護的に働いている事を示唆する。一方で家族性パーキンソン病の原因として同定されているA53T変異を導入したαシヌクレインを過剰発現させたところ、野生型に比較して有意に細胞膜コンダクタンスが上昇していることがパッチクランプ法で明らかとされた。これらの結果はシヌクレイノパチーの病態として膜障害が重要であること、凝集体(封入体)形成が必ずしも必要でないことを示唆する。本細胞モデルはシヌクレイノパチーの病態解明について有用な細胞モデルであり、根治的な治療薬の創薬に於いても活用し得る有力なツールであると考えられた。
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