研究課題
基盤研究(C)
αシヌクレイン過剰発現細胞を作成して蛋白凝集物形成と細胞死の関連を検討した。ヒトαシヌクレインを神経芽細胞腫由来のSH-SY5Y細胞株に導入した。これらの細胞を酸化的ストレスに曝露すると細胞質内にユビキチン、ニトロチロシン、ジチロシン陽性、ユビキチン陽性の淡白凝集体が形成された。HSP-27やα B-crystallinなどの低分子モレキュラーシャペロンもこの細胞内凝集体に共在しており、その組織化学的特徴はsynucleinopathy脳内の病的封入体と多くの共通点を持っていた。こうした凝集体形成は、キレート剤による鉄の除去により抑制されたが、このとき細胞死は増加した。逆に鉄の追加曝露により、凝集体形成は促進されたが、細胞死は抑制された。二重染色の結果、凝集体陽性細胞と活性型caspase3陽性細胞はほとんど一致しなかった。これらの実験結果は、病態下の蛋白凝集物形成が細胞防御的であることを強く示唆する。更に、細胞死の機序を検討するために、野生型・変異型αシヌクレインを過剰発現させた細胞の電気生理学的検討を行ったところ、変異型の発現により、細胞膜コンダクタンスが上昇し、脱分極時のカルシウム流入量も増大した。これらの実験結果から変異型シヌクレインによる細胞傷害の機序は、細胞膜のイオン透過性を何らかの機序により高めることによると考えられた。選択的黒質傷害の機序を解明する目的でドーパミン酸化物を高率に産生するチロシナーゼ発現系をコントロール可能な細胞モデルを作製した。この細胞モデルにαシヌクレインの過剰発現を組み合わせたところ細胞死の促進がみられたが、この時細胞死に先行して早期からミトコンドリアの機能低下が見られた。一方でMAP kinaseの変化は顕著でなかった。以上の結果はsynucleinopathyに於ける細胞死の引き金がミトコンドリア機能障害であることを示唆する。
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