研究概要 |
本研究の研究代表者である青木らにより、遠位型筋ジストロフィー(三好型)の原因遺伝子が同定され(Nature Genet,1998) dysferlin(以下ジスフェルリン)と名づけられた。その後、家族歴のない孤発例の遠位型筋ジストロフィー(三好型)および肢帯型筋ジストロフィーの患者にも高頻度にジスフェルリンの遺伝子異常がみられることも明らかになり、ジスフェルリン異常を原因とする筋ジストロフィー疾患群(いわゆるジスフェルリノパチー)という疾患概念が提唱されつつある。本研究により日本人26名の肢帯型の臨床型を呈する筋ジストロフィー患者に12種類のジスフェルリン遺伝子変異が同定され、ジスフェルリノパチーであることが確定した。その中でもG3370T変異と4870delT変異が多くみられ52%をしめたが、三好型で多く報告されている3746delG変異は一例もみられなかった。さらには同遺伝子変異が確定したLGMD2B 13人を対象(5人はG3370T変異を伴う)にその臨床型の検討を行った。平均発症年齢は25±7歳(G3370T変異では32±6歳,他の変異では21±3歳)であった。全て下肢の筋力低下で発症し、時に初期に仮性肥大を認めた。上肢は30年の経過で机上の操作レベル、下肢は25年で車椅子レベルに至った。顔面や外眼筋の障害、嚥下困難、翼状肩甲、前後側彎は認めなかった。血清CK値は経過と共に低下していく。心胸郭比は拡大するが左室駆出率は変化しなかった。%肺活量は経過と共に低下し、2例では人工呼吸を必要としている。G3370Tを持つと発症年齢は遅いが、その後の進行速度に大差はないとことが明らかになった。今後はさらに症例を増やして検討をする必要がある。
|