研究概要 |
進行性の神経変性疾患であるマシャド・ジョセフ病はその原因遺伝子が同定されているが、有効な治療法は確立していない。本症に対する治療戦略として様々な可能性が考えられるが、本研究では、本症がCAGリピートの異常伸長に対応して翻訳産物(ataxin-3)中のポリグルタミンが異常伸長し、この異常ataxin-3の新たな有害な性質、即ちgain-of-function機序により神経細胞死が招来されることに着目した。即ち、異常遺伝子の発現抑制が可能であれば、有効な治療となりえ、異常遺伝子発現抑制は治療法開発の標的のひとつと考えられ、siRNAの治療応用への可能性を検討することを目的としている。 マシャド・ジョセフ遺伝子(MJD)発現系の構築MJD cDNAクローンpMJD1-1等(Neurosci Res28:373-377,1997;理研遺伝子バンクに寄託)をもとに、正常長から異常伸長したものまで種々の長さのCAGリピートを含む全長または一部分cDNA断片を哺乳類細胞系発現ベクターpd1EGFP-N1に組み込み、マシャド・ジョセフ遺伝子(MJD)発現系の構築を進めた。組換えDNAは哺乳類細胞系において組換え遺伝子の発現に際し、GFPによる労光を発する。 MJD遺伝子転写産物配列から、21塩基のsiRNA配列候補の選択を進めている。選択にあたっては、他の遺伝子転写産物配列との相同性の無いものまたは低いことを条件として進めている。siRNAは一本鎖合成オリゴRNAをアニールして調整する。 上記のMJD発現系をCOS7細胞にて発現させ、候補としてデザインしたsiRNAを加え、遺伝子特異的抑制効果があるかどうかを、(1)蛍光顕微鏡によるGFP発現細胞の細胞数の算定。(2)蛍光リーダーによる蛍光強度の測定。(3)リアルタイムRT-PCRによる遺伝子転写産物のコピー数の定量にて最適なsiRNAの選択を進めている。
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