研究課題
ヒトの脳神経系アミロイドーシスの代表的疾患である家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)においてアミロイドーシスの伝播現象が存在するか否かを検討した。今年度は、FAPのトランスジェニックマウスモデルを用いて、FAP患者の剖検臓器から精製したトランスサイレチン(TTR)から成るアミロイド線維(ATTR)画分が、モデルマウスにおけるATTRの沈着をin vivoで促進するかどうかを検討した。本来の5'上流領域6kbを含むヒト変異TTR遺伝子を運ぶFAPのトランスジェニックマウスモデルとTTRノックアウトマウスとの交配により作成されたFAPのモデルマウス株を用いて、8〜11カ月齢のこれらマウス5匹に、FAP患者の剖検時に得られた心筋組織から抽出・精製したATTR画分1mgを尾静脈から注入した。ATTR画分の抽出・精製は、86歳で死亡したVal30Met変異TTRを有するFAP患者の心筋組織からPrasらの水抽出法を樋口らが改変した方法を用いて行った。実験の対照群として、同月齢のモデルマウス5匹に蒸留水のみを同様に尾静脈から注入した。12カ月後にこれらのマウスを解剖して種々の臓器(甲状腺、食道、胃、腸、膵、脳、肺、肝、脾、腎、心、筋、皮膚)におけるアミロイドの沈着を調べた。この結果、ヒトATTR画分を投与したマウス5匹全てで種々の臓器(食道、胃、腸、肺、肝、腎、心)にアミロイドの沈着を認めたが、蒸留水を投与した5匹の対照マウスには認めなかった。しかし今回のモデルマウスでは、組織に沈着したアミロイド線維は抗TTR抗体による免疫染色には陰性で、マウスApoAII蛋白に対する抗体で陽性に染色された。従ってヒトのATTR線維は、FAPモデルマウスにおけるアミロイドーシスの発症を促進したが、発症が促進されたのはTTRアミロイドーシスではなくApoAIIアミロイドーシスであった。
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