研究概要 |
胎生ラット中脳より中脳由来神経幹細胞を大量培養した.ドパミン神経幹細胞への増殖と分化を制御するために各種刺激条件においてnurr-1,shh,en-1,en-2,smo,ptc,pax-2,pax-8のRT-PCR発現解析を行った.ドパミン神経の転写因子nurr-1の発現は細胞外マトリックスをファイブロネクチンとすることで高発現が得られた.又,脳由来神経栄養因子(BDNF),forskolin,ドパミン,アスコルビン酸を種々の濃度・組み合わせで刺激し,培養3,5,7日後の分化した神経細胞をMAP2およびTH(ドパミン神経マーカー)の免疫染色で評価した.ファイブロネクチン上で50ng/ml BDNF,10Mドパミン,10M forskolinの組み合わせにより最も効率のよいドパミン神経への分化が得られた.(Takeshima et al.Society for Neuroscience 2003,#672.7) 分化制御のマーカーとしてTH遺伝子プロモーター領域に蛍光蛋白GFP遺伝子を接合し中脳由来幹細胞への導入条件を検討した.遺伝子導入に成功したが,さらに導入効率の改善と導入細胞の選択を検討中である.また,パーキンソン病のドパミン神経細胞死においてプロテアソームの関与が注目されている.中脳初代培養系を用いてプロテアソーム阻害による神経細胞死にGAPDHの過剰発現が関与していることを明らかにした(Fukuhara et al.,Society for Neuroscience 2003,#78.14).さらに,細胞増殖に関与するp53の信号はプロテアソーム阻害における神経細胞死においてミトコンドリア機能障害を仲介していることをドパミン系神経細胞株を用いて明らかにした(Nakasb et al.Neurosci Lett,2004). これらの成果をふまえて,神経幹細胞のドパミン神経分化制御と生存維持を検討する予定である.
|