常染色体優性遺伝形式をとる痙性対麻痺のうち、最も頻度が高いSPG4の原因遺伝子はspastinをコートしている。spastinはAAAファミリー蛋白に属しているが、spastinの機能と神経変性に至る機序を解明することを目的として研究を行った。 1.Spastinの細胞内局在の解析 強制発現系では、全長の正常および変異蛋白(A485V)は核周囲に偏在し、L426V変異蛋白は一部α-tubulinと一致するfiber状の局在を示した。TM+のみの部分蛋白は核周囲に偏在し全長と類似の局在を示したが、TM-の部分蛋白では核または細胞質にびまん性に局在した。α-tubulin染色では、正常の全長蛋白が強く発現した細胞において微小管の染色性が低下し、切断された微小管が観察された。 2.抗spastin抗体を用いた発現と細胞内局在の解析 N末の合成ペプチドに対するポリクローナル抗体と、リコンビナント蛋白(230-616アミノ酸)に対するポリクローナル抗体を作成した。Spastinはどちらの抗体においても、HeLa細胞の細胞分裂間期では主に核に局在し、分裂期では一部centrosomeにも局在がみられた。hNT2細胞では核と神経突起の先端に局在していた。 3.siRNAを用いた蛋白機能の解析 HeLa細胞でspastinをknock-downさせたところ、細胞分裂後期に細胞の分離障害がみられた。またhNT2細胞では神経突起の先端の脆弱化または枝状の細胞が観察された。遺伝子プロファイリングでは、二種類のsiRNAともにcontrolに比べて増減を示した遺伝子群の中に、M期にリン酸化されるモーター蛋白であるMPP1を認めたが、このMPP1は強制発現系において一部spastinと局在が一致していた。
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