研究概要 |
パーキンソン病はアルツハイマー病に次いで頻度の高い神経変性疾患であり,その原因は現在もまだ不明である.当研究室では家族性の若年性パーキンソン病の原因遺伝子であるパーキン遺伝子の異常を発見し,その機能解析および変異解析を行っている.我々は若年性パーキンソン病患者においてパーキン遺伝子の変異解析を行っていくうちに,常染色体劣性遺伝形式をとる家族性パーキンソン病のうち約50%の患者にパーキン遺伝子変異の認められないことを確認した. 近年,これらの家系から1p35-p36に連鎖するPARK6および1p36に連鎖するPARK7が発見され、それぞれの原因遺伝子がPINK1遺伝子、DJ-1遺伝子であることが明らかになった。PARK6,PARK7についてハプロタイプの解析を行い日本人患者においてもこのタイプの家族性パーキンソン病が存在していることが確認されている。これらの家系に対してPINK1遺伝子変異およびDJ-1遺伝子変異を調べたところ、PINK1遺伝子変異を6家系に認めた。これらはすべて新しい変異であった。DJ-1遺伝子変異は認められなかった。PINK1遺伝子変異は家族性パーキンソン病の約5%に見られることが推測された。連鎖解析の結果をNeurologyに、遺伝子変異の結果をAnnals of Neurologyに報告した。さらなる遺伝子解析を続けた結果、PINK1遺伝子に欠損変異がある家系を確認した。今までに報告されたPINK1遺伝子変異はすべて点変異であり、欠損変異が発見されたのは世界で初めてである。この結果ともう一つの新たな点変異を含めNeurologyに報告した。 新規家族性パーキンソン病の原因遺伝子の単離については高齢発症の常染色体劣性遺伝形式をとる家族性パーキンソン病にターゲットを当てて解析を進めている。
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