本年度は臨床病理学的に皮質基底核変性症(CBD)または進行性核上性麻痺(PSP)と診断された剖検例以外に、都老人研臨床神経科学研究グループが管理する連続剖検8000例以上から黒質、小脳歯状核などに変性を伴う症例または臨床的にパーキンソニズムを呈していた症例を抽出し、これらの症例の臨床情報および免疫染色などを用いて神経病理学的診断を行った.その結果、発症初期に神経内科医の診察を受け、Lドーパの効果が確認され、パーキンソン病と臨床診断されていた症例の中にPSP例が多数あることを確認した.また、これらの症例のPSP病変は軽度なものから高度なものまで連続的に観察され、高齢になるほど、PSP病変を有する症例の割合が増加する傾向を認めた.一方、CBDは症例数が少ないこともあり、傾向を明らかにすることは困難であったが、全例で臨床的に神経学的異常を認めており、PSPのように病変が軽度なものから高度なものまで連続的に存在する可能性は小さいと考えられた.PSP病変は加齢に伴って広く認められる病理学的変化である可能性が考えられた.さらに、これらの臨床病理学的にCBDまたはPSPと診断された剖検例および連続症例においてPSP病変を認めた症例に対して、主として皮質と白質におけるタウアイソフォオームの違いを検討するべく、パラフォルムアルデヒドで48時間固定した弱固定標本に対して、4-repeat tauに対する抗体を用いて検討を開始した.この点については結果が出そろった時点で解析を行う予定である.
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