研究概要 |
昨年度までの研究により、LacZ遺伝子発現ユニットを持つ組み換えウイルスをラット坐骨神経に直接投与、神経毒性を示さず、LacZ遺伝子が強発現することを確認した。さらに、HGF,VEGF,FGF2の3種類の遺伝子発現ユニットを持つ組換えウイルスの作製、HGF発現およびVEGF発現組換えウイルスベクター導入による目的遺伝子産物(タンパク)の発現量と生物学的活性の確認を行った。 本年度は、これらの組換えウイルスベクターの神経保護作用を見る第一歩として、ラット脳虚血モデル(中大脳動脈一過性阻血)を用いて、脳梗塞縮小効果、神経学的所見改善効果を検討した。当初の計画では、組換えウイルスは脳室内投与あるいは虚血部位へのstereotacticな直接投与を予定していたが、研究の過程において、本ウイルスベクターにより骨髄間葉系幹細胞に高効率の遺伝子導入が可能なことが判明、骨髄間葉系幹細胞による神経再生作用や各種サイトカイン産生による神経保護作用も期待して、ex vivoにおいて骨髄間葉系幹細胞にHGF,VEGF,FGF2を遺伝子導入し、それを病変部位に注入するという戦略をとることにした。その結果、HGFおよびFGF2導入骨髄間葉系幹細胞注入によりラット脳虚血モデルにおける脳梗塞縮小効果、神経学的所見改善効果が確認された。これらの結果より、単純ヘルペスベクターを用いたFGF2遺伝子導入骨髄間葉系幹細胞は比較的短期的な神経保護作用が証明されたと考えられ、今後筋萎縮性側索硬化症モデルをもちいて、より緩徐に進行する病態に対する長期的な効果の検証を行う予定である.
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