CADASILは脳血管平滑筋細胞の変性・消失を特徴とする家族性脳血管生痴呆症である。本症の原因遺伝子Notch3受容体は血管平滑筋にのみ発現分布するため、その変異が直接に血管変性に関係していると考えられている。本研究ではこの様な平滑筋の細胞死メカニズムを明らかにする目的でNotch3シグナル伝達により発現制御される遺伝子群をDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解析した。先ず、ヒトNotchシグナル伝達の活性化法を検討した。しかし、従来用いられているリガンド発現細胞との混合培養ではリガンド細胞のRNAがマイクロアレイ解析に影響を与えることが判明した。そのため、可溶性リガンドの作成・検討を行い、1細胞シグナル伝達系の開発を行った。その結果、可溶性リガンドJagged2の添加によりNotch3シグナル伝達が起こることが明らかとなった。また、他のリガンドではシグナル伝達は検出されなかった。この可溶性Jagged2を用いてヒト培養平滑筋細胞RNAのマイクロアレイ解析を行った。Jagged2リガンド添加で発現が昂進する遺伝子としてTARA-like proteinおよびcalcium channelが検出され、抑制される遺伝子としてDUSP23が発見できた(投稿準備中)。特にcalcium channel遺伝子は平滑筋の収縮・弛緩と関係しており興味深い。現在、これらの遺伝子について低酸素、炎症時おける発現変化を組織学的に解析中であり、Notch3とストレスによる細胞死との関係を明らかにする計画である。
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