研究概要 |
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)は常染色体優性の遺伝形式をとり,そのほとんどは染色体4q35領域に遺伝子欠失が認められる.その発症メカニズムは明らかでないが,体細胞モザイクの関与も示唆されている.我々は患者およびその両親におけるサザンブロット解析をおこない,約20%で体細胞モザイクが次世代で新たな遺伝子欠失を引き起こしていること,欠失のサイズおよび割合と発症年齢,臨床的重症度とは関連ないことを明らかにした.また驚いたことに,親世代ですでに遺伝子欠失を有するにもかかわらず全く臨床症状を認めない場合が約半数存在することが明らかになった.とれはFSHDが極めて高い浸透率を示すという従来の定説を覆すものであり報告した(Goto et al.J Med Genet 41:e12,2004). FSHDの臨床症状はきわめて多彩であり,同一家系内においてさえも個人差が著しい.我々は,本邦におけるFSHD家系についてのサザンブロット解析のほとんどを担っており,詳細な臨床情報を加えた独自のFSHDデータベースを有している.これを基に,臨床的にFSHDと診断された200例中,4q35領域に遺伝子欠失の認められない症例40例に注目し,他の疾患との鑑別診断を行うとともに,臨床症状を4q35-FSHDと比較検討した.その結果,4q35-FSHDと鑑別不能な症例が8例あり,うち2例はBecker型筋ジストロフィー(BMD)であった.この結果から,FSHDは臨床的にも遺伝学的にも多様であり,他の疾患であってもきわめて似た臨床症状をとる場合があることを報告した(Yamanaka et al.J Neurol Sci 219:89,2004).
|