研究概要 |
神経保護薬候補であるpropargylamine化合物の中で、最も神経保護タンパク誘導活性が高かったN-propargyl-1(R)-aminoindane (rasagiline)について、神経保護作用の分子メカニズムについて検討した。これまでの研究で、rasagilineは培養神経細胞に対して神経栄養因子であるbrain-derived neurotrophic factor (BDNF),glial cell line-derived neurotophic factor (GDNF)、抗酸化酵素であるsuperoxide dismutase (SOD),抗アポトーシスタンパクであるBCL-2を誘導する結果が得られている。これら神経保護にはたらくタンパクはNFκBやElkなどのストレス関連転写因子の活性化を介して誘導されることが明らかとなった。以上の研究を発展させ、rasagilineが実際にヒト脳内の神経栄養因子増加させるか否かを。オスニホンザルを各4頭の2群に分け、rasagiline溶液2mg/dayまたは生理食塩水を56日間連日筋肉内注射した後、28日間の休薬を行った。rasagiline投与により全身状態や行動の変化は認められず、その安全性が証明された。rasagiline投与前、および投与後経時的に採取した脳脊髄液中における分泌タンパク、特に神経栄養因子をELISA法によって定量した。その結果、rasagiline投与後1週間でGDNF、BDNFの一過性の増加が認められた。propargylamine化合物はヒトを含む霊長類の脳内においても神経保護タンパクを増加させる可能性があり、さらなる研究が必要である。
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