平成15年度はOtx3の分子生化学的特性の解明とOtx3ノックアウトマウス(Otx3^<-/->)の表現型解析を行った。(1)分子生化学的特性の解明:Otx3の機能をゲルシフトアッセイと転写レポーターアッセイで解析した。ゲルシフトアッセイの結果、Otx3は標的DNA上でホモダイマーを形成することが明らかにされた。転写レポーターアッセイの結果、Otx3が転写抑制因子として機能していることが確認され、転写抑制ドメインが同定された。また種々の変異体を用いた解析により、ダイマー形成やDNA結合に必須なドメインおよびアミノ酸が明らかになった。さらに、生体内におけるOtx3の発現パターンがOtx1やOtx2と重複することから、Otx3がOtx1やOtx2とヘテロダイマーを形成する可能性を考え分子間相互作用を調べたところ、Otx3はOtx2と共存する状態ではヘテロダイマーを形成することが示された。また、Otx3の標的分子を解明する目的で、random screening法を用いOtx3の結合DNAコンセンサス配列を同定した。(2)Otx3^<-/->の表現型解析:Otx3^<-/->の表現型の解析を進める過程で、Otx3^<-/->が生後に著明な成長障害をきたし、ほとんどが出生直後あるいは生後に死亡することが明らかになった。Otx3^<-/->の血清IGF-1も低値であった。Otx3のイソフォームであるOtx1のノックアウトマウスも類似した生後の成長障害を示すことが知られている。Otx1は下垂体前葉における成長ホルモンや、卵胞刺激ホルモン、黄体化ホルモンの転写を制御していることが報告されていることから、Otx3も同様に下垂体前葉ホルモンの転写制御に関与している可能性が考えられた。高い死亡率のため、Otx3^<-/->の耐糖能についてのin vivo実験が困難な状況であるが、出生後の糖代謝異常を今後検討する予定である。
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