酸化ストレス・過酸化脂質と糖尿病性腎症――遺伝子導入によるモデル動物での検討――

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15590931
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 塚本 和久 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (20251233)
• 研究分担者: 原 眞純 東京大学, 医学部附属病院, 医員 ; 東郷 眞子 東京大学, 医学部附属病院, 医員 ; 野入 英世 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (00301820) ; 磯尾 直之 東京大学, 医学部附属病院, 医員
• キーワード: 糖尿病 / 糖尿病性腎症 / 酸化ストレス / 過酸化脂質 / 遺伝子導入 / PAF acetylhydrolase

研究概要

糖尿病性腎症発症に過酸化脂質・酸化ストレスが重要な役割を演ずることは様々なin vitro研究から近年明らかとなってきているが、in vivoにてこれらの事実を明白に証明した研究は報告されていない。我々は酸化ストレスを改善することが糖尿病性腎症抑制に結びつくかどうかを検討する目的で、PAF-AHを発現するアデノウイルスを糖尿病性腎症モデル動物に投与し検討を行った。
まずモデル動物として糖尿病性腎症を発症することが報告されている(JCI 95:2338,1995)オスdb/dbマウスを用いた。9週齢にて1.25X10^<11>particlesのアデノウイルス(AdPAFAHおよびコントロールウイルスAdLacZ)およびPBSを各グループ4匹ずつ尾静脈から投与した。血漿PAF-AH活性はPBS群およびAdLacZ群において投与前後で相違はなかったが、AdPAFAH群において投与3日目で投与前の約42倍に上昇した。しかし、一日尿中アルブミン量を測定したところ、上記の論文の結果とは異なり、PBSのコントロール群においてさえも週齢とともに尿中アルブミン量の減少が見られ、ウイルス投与後28日目までの検討では上記3群の間に有意な相違は認めなかった。現在腎組織におけるメサンギウム領域の拡大の変化を検討中である。さらに糖尿病性腎症を発症するとされるモデル動物SHR/NDmc-cp(fat/fat)ラット(J Am Soc Nephrol 14:1212,2003)を用いて同様にAdPAFAH投与による尿タンパクに対する効果の検討を行なうことを計画した。しかし、血糖値を頻回に測定するも、糖尿病の診断が下せるような血糖値の上昇をきたしていないことが判明した。それゆえ、現在、脂肪食負荷にて糖尿病発症を経過観察している。さらに、現在糖尿病性腎症による蛋白尿をきたすことが以前に報告されているストレプトゾシン投与C57BL/6マウスにおいて、その尿タンパク量変化が以前の論文(Eur J Pharmacol 398:381,2000)のように再現可能かどうか、の基礎検討を行っている。

研究成果

• [文献書誌] Hara M, Tsukamoto K, et al.: "Isoform-dependent cholesterol efflux from macrophages by apolipoprotein E is modulated by cell surface proteoglycans"Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biology. 23. 269-274 (2003)
• [文献書誌] Noto H, Tsukamoto K, et al.: "Human plasma platelet activating factor-acetylhydrolase binds to all the murine lipoproteins, conferring protection against oxidative stress"Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biology. 23. 829-835 (2003)
• [文献書誌] Noto H, Tsukamoto K, et al.: "Modulation of HDL metabolism by probucol in complete cholesteryl ester transfer protein deficiency"Atherosclerosis. 171. 131-136 (2003)
• [文献書誌] Shintani Y, Tsukamoto K, et al.: "Hepatitis C Virus Infection and Diabetes : Direct Involvement of the Virus in the Development of Insulin Resistance"Gastroenterology. 126. 840-848 (2004)
• [文献書誌] Suzuki M, Tsukamoto K, et al.: "Facilitated angiogenesis induced by heme oxygenase-1 gene transfer in a rat model of hindlimb ischemia"Biochemical & Biophysical Research Communications. 302. 138-143 (2003)
• [文献書誌] Ishizaka N, Tsukamoto K, et al.: "Association between insulin resistance and carotid arteriosclerosis in subjects with normal fasting glucose and normal glucose tolerance"Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biology. 23. 295-301 (2003)