研究概要 |
1型糖尿病の疾患感受性は複数の遺伝因子で規定されているが、ヒトにおいてもモデル動物NODマウスにおいても、主要組織適合抗原(MHC)領域の遺伝因子は感受性に最も強く影響する。これまでNODマウスと同一のクラスII MHCを有するCTSマウスのMHC(H-2)をNODマウスの遺伝背景に導入したコンジェニックマウスNOD.CTS-H-2系統の検討より、MHC領域による強い疾患感受性は複数の遺伝因子の複合効果であり、クラスII MHCの外側の領域に感受性遺伝子Idd16が存在することを示してきた。凍結胚の胚移植によるコンジェニック系統の立ち上げより、本研究では以下の解析を進めた。 1,このコンジェニックマウスコロニーの拡大を行い、本系統では1型糖尿病発症率がNODマウスの約4分の1に低下していることを明らかにした。 2,戻し交配により見出した別の組換え染色体を持つマウス(F17とF21)をもとに、遺伝子マーカーのタイピング結果より選択的交配を行い、2系統のサブコンジェニック系統を樹立した。ホモのコンジェニックマウスは観察例数が限られていたが、糖尿病発症率の比較によりIdd16の存在領域がより限局されることを明らかとした。 3,この領域の中の候補遺伝子としてクラスI MHC K遺伝子に注目し、NODマウスとCTSマウスのK遺伝子の塩基配列の決定ならびに蛋白レベルでの解析の結果より、CTSマウスのK遺伝子がユニークであることを見出し、K遺伝子がIdd16である可能性を見出した。 4,マウスIdd5.2の責任遺伝子と考えられるSlc11a1遺伝子のヒト対応遺伝子SLC11A1遺伝子に注目し、この遺伝子のプロモーター領域のZ-DNAフォーミングモチーフの遺伝子多型が人種差を越えて1型糖尿病に関与することを相関研究とメタ解析により明らかとした。
|