研究概要 |
HNF-4αのDNA結合領域にはT>I(T130I)の多型性が存在しているが、その意義については不明である。そこでwild type (WT)-HNF-4αおよびT130I-HNF-4αの機能について検討した。その結果、T130I変異体HNF-4αのDNA結合能はWTと同様であり、HeLa細胞やMIN6細胞に発現させた場合の転写活性能もWTと同様であった。しかし、T130I変異体を肝細胞株であるHepG2細胞に発現させた場合、その転写活性能は約50%に減弱していた。マウス初代培養肝細胞を用いて検討した結果でも、T130I変異体の転写活性は30-70%と有意に減弱しており、本変異体が肝におけるloss-of-function変異であることが判明した。そこで、日本人2型糖尿病患者423名、コントロール354名を用いて、本変異の頻度について相関解析を行い検討したところ、T130I変異は2型糖尿病群で有意に増加していた(p=0.015,odds ratio 4.3,95% CI 1.24-14.98)。臨床像の検討を行ったところ、本変異を有する患者においては低HDL血症が認められた(T130:55+/-18mg/dl,I130:40+/-13mg/dl,p=0.006)。HNF-4αは肝における脂質代謝を調節しており、肝における機能低下が脂質・糖代謝の異常を引き起こす可能性が示された。 HNF-4αは肝以外にも発生段階から膵β細胞に発現していることを特異的抗体を用いて明らかにした(manuscript in preparation)。HNF-4αの膵β細胞における意義について検討するために、HNF-4α floxマウスとRIP-Creトランスジェニックマウスを交配させ、膵β細胞特異的HNF-4αノックアウトマウスを作製した。膵β細胞特異的ノックアウトマウスでは耐糖能の悪化が認められたが、発生における明らかな異常は認められなかった。今後、膵β細胞特異的ノックアウトマウスの膵島を単離し、インスリン分泌能について検討する予定である。
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