脂肪細胞でのグルコース代謝において、インスリン作用の最終作動分子は糖輸送担体であり、これを含む膜輸送の分子メカニズムについて検討している。 平成15年度の研究から、下記の2つの新規知見を得た。 (1)Unconventional myosinに属する分子モーターを脂肪細胞から同定した。この分子はInsulin receptor substrate 1のセリンアミノ酸をリン酸化するのに必須であり、インスリンシグナルに負の影響を与えていることを確認した。また、一方このmyosinはインスリン抵抗性分子とも結合することがわれわれの研究から判明している。 (2)細胞膜表面における糖輸送担体の挙動については全く情報がないが、今回われわれは、糖輸送担体をカベオリンラフトに導く蛋白質(p60)を脂肪細胞から同定した。この分子自身にATPase活性はないが糖輸送担体をエンドサイトーシスさせるのに必須で、結果として糖輸送能に負の制御をしていることが分かった。 上記(1)の結果は、ヒトでのインスリン抵抗性の分子メカニズムを考える上で大変興味深く、今度はmyosinの変異体を作成するなどしてその詳細なシグナル伝達路とmyosinとの関係や、糖輸送との関連を検討したい。 (2)の結果は、細胞膜マイクロドメインと糖輸送能との関連を一部であるが明らかにできるポテンシャルを持ったもので、今後は、電子顕微鏡などを利用しより細密に検討を重ねたい。 今年度の研究では、kinesin分子モーターの解析も同様に行ってゆくつもりである。
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