研究課題
基盤研究(C)
糖尿病の病因はインスリンの作用不足であり、進行した病態では膵β細胞からのインスリン合成/分泌不全が生じる。我々は現在までに膵β細胞におけるインスリン遺伝子転写機構について検討してきた。インスリン遺伝子転写の生理的刺激は血中グルコース濃度の変化であり、インスリン遺伝子プロモーター内にグルコース応答領域が数カ所存在する。現在までにグルコース応答領域に結合する転写因子がいくつか報告されているが、我々はPDX-1がサイトカインに応答してインスリン遺伝子発現を制御することを報告してきた。また新たな転写因子PREBがグルコース刺激に応答して膵ベータ細胞で発現誘導されてグルコース応答領域に結合してインスリン遺伝子転写を促進することを明らかにした(投稿中)。またグルコースによるインスリン遺伝子発現の細胞内情報伝達系としてCaMKK/CaMKIVカスケードを新規に同定してきた(Diabetes 2004)。グルコース刺激によりCaMKK/CaMKIVが活性化され、CaMKK/CaMKIVの阻害によってグルコース応答性インスリン遺伝子転写が抑制された。一方、膵β細胞の再生実験として、転写因子IB-1遺伝子に注目した。IB-1遺伝子は膵ベータ細胞に発現しており、膵ベータ細胞のアポトーシスを抑制していることが報告されているが、その分子学的機序としてIB-1遺伝子はPPAR-γに応答することを見出している。今後は、これらに知見をもとに新たな再生膵β細胞を樹立する予定である。
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