糖化コラーゲンとその受容体の血管平滑筋細胞機能と側副血管形成に対する影響

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15590953
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 小山 英則 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 講師 (80301852)
• 研究分担者: 山本 博 金沢大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00115198)
• キーワード: 糖尿病 / 血管形成、血管新生 / AGE / RAGE / 動脈硬化 / 血管平滑筋細胞 / 細胞外マトリックス / コラーゲン

研究概要

多くの疫学調査により、糖尿病患者の心血管疾患発症が非糖尿病患者の2-4倍多いことが知られている。近年その機序の一つとして、糖尿病患者で虚血組織の側副血管形成が障害されていることが報告されている。今回、糖尿病における血管形成障害の機序に、糖化蛋白(advanced glycation endproduct : AGE)とその受容体receptor for AGE(RAGE)が関与する可能性をRAGE欠損マウス(RAGE-KO)とその野生型マウス(RAGE-WT)を用いて検討した。血管形成はvascular endothelial growth factor(VEGF)を含んだマトリゲルをマウス皮下に注入するマトリゲルプラグ法により検討し、マトリゲルに侵入した総細胞数、内皮細胞数(CD31陽性細胞)、周細胞または平滑筋細胞(SMアクチン陽性細胞)により評価した。糖尿病はストレプトゾトシン投与により作製した。RAGE-WT糖尿病マウスでは対照マウスに比べて、総細胞数(48.7±26.8%)、CD31陽性細胞(48.9±29.6%)、SMアクチン陽性細胞(62.4±41.5%)といずれも低下していた。一方RAGE-KO糖尿病マウスにおいては、いずれの細胞数も対照マウスと差を認めなかった。このことはRAGEが糖尿病状態における血管形成障害に関与することを示している。次にこれらの糖尿病における血管細胞数の低下がAGE化された細胞外マトリックス上での遊走低下が関与する可能性を、RAGE-WT及びRAGE-KOマウス胸部大動脈から分離した血管平滑筋細胞(SMC)を用いて検討した。糖化マトリックスは繊維性コラーゲンをglycolaldehydeにより処理することにより作製した。細胞遊走はシリンダー内で培養後シリンダーを除去し、細胞の周囲への遊走距離で評価した。RAGE-WT SMCの糖化コラーゲン上での遊走は非糖化コラーゲン上に比べて有意に低下していたが、RAGE-KO SMCでは優位な低下を認めなかった。以上の結果より、AGE化細胞外マトリックス-RAGEは血管細胞の遊走を抑制し、糖尿病における血管形成障害に関与すると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Morioka T, Koyama H, et al.: "Role of H1-calponin in pancreatic AR42J cell differentiation into insulin-producing cells"Diabetes. 52. 760-766 (2003)
• [文献書誌] Koyama H, Maeno T, et al.: "Platelet P-selectin expression is associated with atherosclerotic wall thickness in carotid artery in humans"Circulation. 108. 524-529 (2003)
• [文献書誌] Kizu A, Koyama H, et al.: "Arterial wall stiffness is associated with peripheral circulation in patients with type 2 diabetes"Atherosclerosis. 170. 97-91 (2003)
• [文献書誌] Izumi Y, Kim S, Yoshiyama M, Izumiya Y, Yoshida K, Matsuzawa Y, Koyama H, et al.: "Activation of Apoptosis Signal-Regulating Kinase 1 in Injured Artery and Its Critical Role in Neointimal Hyperplasia"Circulation. 108. 2812-2818 (2003)
• [文献書誌] Matsumoto N, Ishimura E, Koyama H, et al.: "Blcoking of α5 integrin stimulates production of TGF-β and PAI-1 by human mesangial cells"Biochemical and Biophysical Research Communications. 305. 815-819 (2003)
• [文献書誌] Kimoto E, Shoji T, Shinohara K, Inaba M, Okuno Y, Miki T, Koyama H, et al.: "Preferential stiffening of central over peripheral arteries in type 2 diabetes"Diabetes. 52. 448-452 (2003)