研究課題
基盤研究(C)
生細胞でのpH可視化測定:pKa8.0とpKa7.2中心に感度域を設定したプローブを、ミトコンドリア内膜遺伝子に融合し、新たな蛍光タンパクプローブを二種類作製した。今回改良したプローブ遺伝子を生細胞に導入し、可視化測定を試みた。イオノフォア存在下、外液pH変化に依存して蛍光比は変化し、そのpKaは合成蛋白と同様であり、in vitroの結果と同様にS/N比が増大していた。細胞内ミトコンドリアpH:チトクロームcIVのミトコンドリア移行配列にこのプローブを融合し、これを培養細胞に遺伝子導入し、生細胞内ミトコンドリアpHが測定できることを確認した。インスリン分泌細胞における細胞内ミトコンドリアpH:これを用いて、培養細胞のインスリン分泌時におけるミトコンドリア膜機能の継時的解析を可能とした。MODY遺伝子として報告されている核内受容体転写因子はインスリン分泌に関わるミトコンドリア機能に関与することが報告されている。インスリン分泌細胞におけるミトコンドリア機能の変化は、糖尿病発症において重要な意味付けがあるにもかかわらず、ミトコンドリア機能の解析は生化学的手法が主流であり、上述のミトコンドリア膜pKa8.0中心に感度域を設定したプローブをCHOに、pKa8.0とpKa7.2中心に感度域を設定した二つのプローブを、インスリン分泌培養細胞INS-1、にリポフェクタム法で導入し、安定発現細胞を作成した。これら三種の細胞を用いて、マンニトールをコントロールとした潅流実験によるグルコース負荷時におけるミトコンドリアpHの変動を検討した。CHOにおいては、グルコース負荷によりミトコンドリア膜pH変動は認められなかったが、INS-1において、ミトコンドリアpHは7.5前後でグルコース負荷により低下しpH7.0前後となり、グルコース濃度低下により再度上昇した。またCCCP投与により、ミトコンドリア膜のpHは再度低下し、CCCP除去によりpHは上昇し、CCCP負荷前のpHに復した。考察:ミトコンドリア膜pHはグルコースのインスリン分泌刺激により、H+が内膜より膜間腔に放出され、またATP合成により、pHが下がると思われた。反対に、グルコース濃度低下により、この反応が抑制され、上昇してくるものと思われた。この安定発現細胞を用いるシステムは、糖尿病原因となりうる遺伝子の変異蛋白がミトコンドリア機能に及ぼす影響を、生細胞を用いて検討することを可能とする有用なツールと考えられた。
すべて 2005
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