研究概要 |
本研究は薬剤介入による膵β細胞機能保護機構を膵ラ氏島レベルで詳細に検討することによって肥満糖尿病モデル動物C57BL/KsJdb+/db+マウス(以下db/dbマウス)の膵β細胞機能障害機序を解明することにある。そのため(1)6週齢db/dbマウスにKATPチャネル開口薬diazoxide(D群)とthiazolidinedione系薬剤pioglitazone(P群)による12週間の介入を行い,膵β細胞機能障害の抑制効果についての形態学的検討、(2)10週齢マウスに2週間介入し、分子生化学的解析を行なった。膵ラ島の組織学的解析では、%膵ラ氏島面積、β細胞比率とも非介入群のそれと比較し、両群で有意に増大した(P<0.001)。2週間介入で血糖,中性脂肪,遊離脂肪酸は低下し,血中インスリン値はD群で増加、P群では低下していた。血中アディポネクチン値はP群でより顕著に増加し,両者併用ではさらに著明な増加をみた(P<0.001)。インスリン感受性はP群で有意に改善した(P<0.01)が、D群では改善効果をみなかった。膵ラ島内中性脂肪含量はP群で減少した(P<0.05)が,D群では変化なし。膵ラ島グルコース応答性インスリン分泌反応は、両群とも改善した(P<0.05vs非介入)。db/dbマウス膵β細胞機能障害は薬剤介入で抑制可能であり,その機序としてDは膵β細胞に直接作用し,膵β細胞オーバーワークの抑制により、機能保護に働く一方、Pはインスリン感受性増強による糖毒性の改善に加えて,膵β細胞における脂肪毒性の抑制も関与すると思われた(以上の成果の一部はAm.J.Physiol.及びEur.J.Pharmacol.に投稿中)。今後、さらに膵ラ氏島内遺伝子発現への影響も含めて、詳細な解析をすすめる予定である。
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