研究概要 |
研究目的:遺伝子治療は、新しい治療法としての有用性が注目されているが、ウィルスベクターに関しては、安全性に問題があり、また、ポリマーベクターにはin vivoでの遺伝子発現効率に問題が残されている。我々は、ブロック共重合体を用いて、血中安定性の良好でin vivo遺伝子導入が可能な遺伝子導入ベクターの開発を行ってきた。本研究では、in vivo遺伝子導入の効率を改善し疾患モデルの治療を行うこと、さらに、動脈硬化巣への選択的遺伝子導入法を開発することを目的とする。 研究方法:PEG(分子量12,000)とDET(polyaminoethylene aminopropyl aspartamide)の共重合体(PEG-DET)を用い、た。DETの重合度が68のものと、101のものを用い。NH基と燐酸基の比率(N/P比)を変化させ、実験に供した。in vitro遺伝子導入には、ルシフェラーゼ遺伝子を細胞にトランスフェクションし、in vivo遺伝子導入は、気管内投与、および左室内投与し、ルシフェラーゼ活性を測定した。 研究成果:PEG-DETを用いたトランスフェクションにより、Cos-1細胞、HepG2細胞、血管内皮細胞、THP-1細胞の、いずれの細胞へもExgen(polyethylenimine)以上の遺伝子導入が可能であった。in vivo気管内遺伝子導入では、重合度68、N/P比80のPEG-DETで、気管内投与1日後に約80万(RLU/mg prot)の活性を認め、Exgenによる遺伝子発現量の40倍であった。3日後に最大の300万、7日-14日後でも1万の発現を認めた。6ヶ月齢の、動脈硬化病変を有するアポEノックアウトマウスへの左室内投与により、1日後に大動脈に遺伝子発現を認めた。その他の臓器には発現を認めなかった。 総括:PEG-DETを用いることにより、従来の方法に比しin vitroおよびin vivo遺伝子導入の著明な改善を認め、また、動脈硬化巣特異的遺伝子導入が可能となった。
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