研究概要 |
(1)ヒトGH産生下垂体腺腫細胞における既知の非選択性陽イオンチャネル(TRP, TRPVチャネルファミリーなど)の発現を、RT-PCRで解析したところ、おもにTRPV_2チャネルが発現していた。タンパクの発現も培養細胞の免疫染色とウェスタンブロッティングで確認した。このチャネルがIGF-1で活性化される非選択性陽イオンチャネルであることをモルフォリノアンチセンスによる発現抑制実験で証明した。このチャネルGHRHやghrelinによってGH細胞で活性化する非選択性陽イオンチャネルと異なり明らかなカルシウム透過性を有していた。活性化の刺激伝達経路にPI3kinaseの関与が示された。 (2)IGF-1で活性化されるTRV_2チャネルの生理的機能を確認するために、IGF-1によるp70S6 kinaseの活性化を検討した。ヒトGH産生下垂体腺腫細胞ではIGF-1によりp70S6 kinaseが活性化され、この活性化はTRPV_2の選択的ブロッカーで消失した。(3)ペプチドホルモン分泌に関与するGTP結合タンパク質であるRab27bがヒト下垂体細胞に発現していることを免疫染色で確認した。機能消失変異を与えたRab27bを過剰発現したヒト下垂体腺腫細胞において、脱分極刺激による開口分泌が抑制される事を明かにした。 (4)gsp変異のあるGH産生腺腫では、Gsαの持続的活性化によるAdenylyl cyclaseの活性化により細胞内cAMP濃度の増加、PKAの持続活性化が生じ、その結果非選択性陽イオンチャネルが基礎状態で活性化される事を明らかにしていた。PRK1A変異では、PKA活性を抑制的に調節するprotein kinase A regulatory subunit 1Aの機能欠失変異のあるCarney Complexの症例のGH産生腺腫で、protein kinase A regulatory subunit 1Aの機能欠失変異と対測アレルのLOHによりPKAが持続活性化し非選択性陽イオンチャネルが基礎状態で活性化される事を電気生理実験で明らかにできた。
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