研究概要 |
我々は、コルチゾル産生副腎腺腫において付随正常副腎に比し発現が増加する遺伝子をスクリーニングし、hDiminuto遺伝子をクローニングした。そして本腺腫の発症にhDiminutoがアポトーシスの抑制を介して関与する可能性を示した。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は、CDK (Cyclin dependent kinase)抑制蛋白P27kip1を誘導するなど、副腎皮質細胞の増殖抑制作用を示すことが報告されている。しかしin vivoでは一致した見解は得られていない。PCNA (Proliferating cell nuclear antigen)はDNAの複製に関与しS期に強く発現する。p27kip1はGO期に強く発現し、細胞増殖刺激によりその発現は減少し、細胞周期が進行する。本研究では、ACTHがラット副腎におけるPCNA、p27kip1、hDiminutoの発現に及ぼす影響を検討した。 【方法】 6週齢のラットにデキサメサゾン4mg/kg(Dex)を連続5日間腹空内投与してACTH分泌を抑制した後、ACTH-Z(50IU/kg)を筋注し、0,12,24,48,72時間後に副腎を摘出した。ウエスタンブロット法によりPCNA、p27kip1を、ノザン法によりhDiminutoの発現を解析した。 【結果】 PCNAはDexによりコントロール群(Dex非投与群)に比し著しく減少し、ACTH投与後48,72時間に有意に増加した。p27kip1はDexにより増加し、ACTH投与直後に著しく減少し、72時間後には再び増加した。hDiminutoはDexにより著しく減少し、ACTH投与後12時間以降有意に増加した。 【考案】 ACTHはhDiminutoやPCNAの発現増加を介して副腎皮質細胞の増殖を刺激すると共に、こうした増殖刺激後にはp27kip1の発現増加を介して増殖を抑制し分化を促進する作用があることが示唆された。
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