研究概要 |
我々は、hDiminuto/DHCR24遺伝子の発現がコルチゾル産制副腎腺腫に隣接する副腎組織で著しく減少しており、同時に多数の細胞のアポトーシスが認められたことから、hDiminutoはアポトーシスの抑制を介して副腎皮質細胞の増殖に重要な役割を果たしていることを報告した。また、昨年度までのラットを用いた研究で、ACTHにより増殖する副腎皮質細胞は主として球状帯に存在し、ACTHはcyclin-dependent kinase抑制蛋白(CDKI)の一つp27kip1の発現低下、PCNA(proliferating cell nuclear antigen)やhDiminutoの発現増加を介して、細胞をS期に進行させることを示した。本年度は、別のCDKIであるp57kip2の発現を含めて、ACTHがラット副腎細胞の増殖に及ぼす影響を検討した。 方法 ウイスター系雄ラットにDex 4mg/kgを連続5日間連続腹空内投与して内因性ACTH分泌を抑制した後、ACTH-Z 50IU/kgを筋注し、0,12,24,48,72時間後に副腎を摘出した。ウエスタンブロット法、免疫組織化学法によりPCNA、p27kip1,p57kip2の発現を解析した。 結果 Dex投与により副腎は著明に萎縮しPCNAの発現が減少したが、ACTH投与48、72時間後PCNAの発現は増加した。p27kip1の発現は、対照群、Dex投与群で同程度認められ、ACTH投与12時間後に皮質で著明に減少し、72時間後増加した。こうしたp27kip1の発現とは対照的に、p57kip2の発現は対照群、Dex投与群とも認められなかったが、ACTH投与48、72時間後球状帯で著しく増加した。 結語 p27kip1とp57kip2の副腎細胞における発現はACTHにより個別に制御されていることが明らかとなった。ACTHによる細胞の増殖にはp27kip1の発現低下による細胞周期の進行が重要で、その後のACTHによる細胞の増殖抑制・分化にはp27kip1とp57kip2の両者が協調して働くことが示唆された。
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