研究概要 |
平成17年度ではヒトleptin遺伝子転写開始点より上流域に2つの遺伝子、ヒトα1-collagen遺伝子とヒトleptin遺伝子のそれぞれ上流域数kbpをヒトゲノム情報に従い,特異的なオリゴprimerを設計し,PCRで増幅し、pGEMベクターに組み込み、PCRクローニングを行った。うち、ヒトLeptin遺伝子cloningはH16年度の転写開始点より上流域-3.5kbp遺伝子断片キメラにかえて,leptin遺伝子転写開始点より,2.4kbpの遺伝子断片+ヒトGH遺伝子2.1kbpのキメラ遺伝子(Lep-hGH,4.5kbp)を再調整した.dr未受精卵子に直接、Lep-hGHキメラ遺伝子とdr凍結精子混合液を顯微注入したところ、22匹のdr個体(FO)を得た。うち,4匹のF0にLep-hGH遺伝子の組み込みを認めた.dr♀と交配したが,うち1匹は不妊であった.のこる3匹のF1より,さらにF2を得た. 平成17年5月30日の定期検査にて,当該Tgラットの飼育室全体がMycoplasma pulmonisに汚染されていることが判明した.さらに,前後して,Tg出生個体数の激減した.限られた匹数のLep-hGH-dr(n=7)で遺伝子発現の解析を行った. hGH遺伝子は脂肪組織とそれ以外は精巣・卵巣に強発現していた(RT-PCR解析).それ以外のhGH発現組織としては,既報のごとく,Leptin遺伝子発現組織(胃体部,副腎,腎臓など)に少量のhGHが発現していた.興味あることに,血中にhGH蛋白が検出された(hGH:8.1-949.1pg/ml).これらTgラットは対照のdrと比較し,体重は生後2ヶ月で1.3-1.5倍,体脂肪は140-150%の増加を示した(写真は生後12ヶ月♂Lep-hGH-dr). 一方,α1c-hGH-drの作出はTg飼育室全体がM.pulmonisによって感染されたため,中断した. 従って、今回の成績からは1)ヒトLeptin遺伝子転写開始点より-2.4kbp上流域promoterを用いると,ほぼ脂肪細胞に特異的なヒトGH遺伝子を発現させうること,2)予想に反して,Lep-hGH-drは肥満を示すことが明らかとなった.今回の肥満はヒトGH遺伝子発現量が十分でないためなのか,流血中の微量のhGHが体脂肪増加に作用したのかは今後の検討課題である.H17年度の研究経費は遺伝子発現解析のための試薬品費とTg飼育と管理維持費が大半を占めた。
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