研究概要 |
本年度は主に研究目的後半の『核レセプターLXRによるヒトレニン遺伝子およびc-myc遺伝子発現制御に関する検討』を行った. A.ヒト傍糸球体細胞(JG細胞)においても,定常的LXR蛋白発現Calu-6細胞においてみられたようなヒトレニン遺伝子プロモーターCNREに対するLXR結合能が認められるか?:定常的LXR蛋白発現Calu-6細胞およびヒト腎組織のJG細胞が豊富な分画からtotal RNAと核抽出液を調整し,ノーザンブロット解析およびプローブとしてヒトレニン遺伝子プロモーターCNREを用いてゲルシフト法およびDNase I footprinting法を行い,ヒトJG細胞における内在性LXR発現および定常的LXR蛋白発現Calu-6細胞でみられたのと同様なヒトレニン遺伝子プロモーターCNREに対するDNA結合能を明らかにした.さらに,抗LXR抗体を用いたスーパーシフトゲルシフト法により,ヒトレニン遺伝子プロモーターCNREに対するDNA結合能が主にヒトJG細胞における内在性LXRのCNREへの結合によるものであることを確認した. B.LXRはヒトc-myc遺伝子プロモーター領域(myc/CNRE)に結合できるか?:予備的実験によってヒトc-myc遺伝子プロモーター領域にもレニン遺伝子CNRE領域と相同性の高いmyc/CNREが存在することが明らかになった.そこで,ヒトレニン遺伝子の場合と同様に,in vitro転写翻訳系にて合成したLXR蛋白とプローブとしてヒトc-myc遺伝子プロモーターCNREを用いて,ゲルシフト法を行い,今度はLXRがヒトc-myc遺伝子プロモーターのCNREに結合できることを明らかにした. C.LXRは心筋細胞および血管平滑筋細胞においてヒトc-myc遺伝子プロモーターを活性化させるか?:心血管系細胞におけるc-myc遺伝子発現調節は心血管系組織のリモデリングと密接に関係している.そこで,myc/CNRE(-336 to -315)を含むヒトc-myc遺伝子プロモーター領域(-2290 to +510)とルシフェラーゼ(luc)遺伝子とのキメラ遺伝子をLXR発現ベクターとともにリポフェクション法により心筋細胞および血管平滑筋細胞に一過性に遺伝子導入してリポーターアッセイを行い,LXRの一過性過剰発現によるcAMP刺激,およびLXRのリガンドである酸化コレステロール(22R-hydroxycholesterolなど)刺激により,ヒトc-myc遺伝子プロモーターの転写活性が亢進することを明らかにした. D.LXR蛋白発現心筋細胞・血管平滑筋細胞においてヒトc-mycおよびレニン遺伝子の発現が増加するか?:アデノウイルスベクターを用いてLXR蛋白高発現心筋細胞および血管平滑筋細胞を作製し,cAMP刺激およびLXRのリガンドである酸化コレステロール(22R-hydroxycholesterolなど)刺激により,Northern blot, RT-PCR, Western blot解析を用いて,ヒトc-mycおよびレニン遺伝子mRNA,蛋白発現量が増加することを明らかにした. E.LXR蛋白発現心筋細胞・血管平滑筋細胞においては蛋白・DNA合成が増加するか?:実際にLXR蛋白高発現心筋細胞および血管平滑筋細胞において,cAMP刺激およびLXRのリガンドである酸化コレステロール(22R-hydroxycholesterolなど)刺激により,アミノ酸取り込み,および,thymidine取り込みを用いて,蛋白・DNA合成が増加することを明らかにした. 以上の一連の研究成果について,第8回日本心血管内分泌代謝学会(宮崎),第37回米国腎臓学会(ASN, St. Louis)において発表し,その一部を英文誌(Mol Cell Endocrinol,2004)に発表し,その他の結果を現在英文誌投稿中である.
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