エストロゲン受容体α(ERα)あるいはERβを過剰発現させたマウス骨髄間質細胞は、bone morphogenetic protein-2 (BMP-2)の刺激により、骨芽細胞および脂肪細胞への分化が促進され、peroxisome proliefator activated receptor γのagonistであるtroglitazone(Tro)刺激により、脂肪細胞への分化が促進される。この系に、アンドロゲン(A)である5α-dehydrotestosterone(DHT)あるいはdehydroepiandrostendinoe(DHEA)を同時添加すると、骨芽細胞への分化が更に促進され、脂肪細胞への分化は抑制された。また、脂肪細胞分化の促進に伴うPPARγ2mRNA発現の増強が、Aにより著明に抑制された。これらの作用は、アンドロゲン拮抗薬であるhydroxyflutamideでは阻害されず、エストロゲン拮抗薬であるICI182780で完全に阻害された。またこれらのA作用は、ER過剰発現細胞では認められたが、野生型ST-2では殆ど認められなかったため、A作用がERを介して発現している可能性を考えた。事実、Aはエストロゲン反応性リポーター遺伝子の活性を高めた。現在、その機序を検討中である。また、AがPPARγ反応性リポーター活性に及ぼす影響を検討する目的で、Tro反応性の強いリポーター遺伝子を作成した。さらに、骨髄間質細胞分化に重要な役割を演じているWnt系との関連についても、検討中である。
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