研究概要 |
我々は、SV40T抗原導入トランスジェニックマウスより33種の骨髄間質細胞株(TBR cell lines)を樹立した。胎児肝細胞を用いたコロニーアッセイの結果、それらの支持する血球のLineageは明瞭な選択性を示した。その選択性は既知の造血因子の発現と相関を示さず、未知の細胞表面分子の関与が示唆された。そこで、DNAマイクロアレイ法を利用して、赤芽球造血支持能に関与する未知の骨髄間質細胞表面分子の同定を計画した。 まず、TBR cell linesのうち赤芽球造血を支持しない3種の細胞株(E-:TBRl7,TBR33,TBR511)と赤芽球造血を支持する3種の細胞株(E+:TBR9,TBR184,TBR31-2)よりそれぞれRNAを抽出し混合した後、cDNAを合成、DNAマイクロアレイ法によりそれぞれの遺伝子発現のプロファイリングを比較した。その結果、7226遺伝子中、466遺伝子がE+でE-と比較して2倍以上の発現を示し、686遺伝子がE-でE+と比較して2倍以上の高い発現を示した。次に、その候補遺伝子から定量PCR(RQ-PCR)によりそれぞれの発現量を比較した結果、E+において有意に発現が増加していた候補遺伝子Tenascin-C(TN-C)を得た。 次にTN-Cに対するsiRNAを作成し、RNA interference法(RNAi)によりTN-Cの発現抑制実験を行った。siRNA添加後、RQ-PCRにて71%のTN-Cの発現抑制効果が得られ、ウエスタンブロット法において蛋白質レベルでの抑制も確認することが出来た。RNAiによりTN-Cを発現抑制したE+を用いて赤芽球コロニーアッセイを行なった結果、赤芽球コロニーの有意な減少を認めた(TBR9:18.0±6.2versus4.7±4.8colonies;P<0.05、TBR184:15.3±8.3versus0.3±0.5;P<0.05)。また外因性TN-CをTBR cell lineに添加して赤芽球コロニーアッセイを行うと、赤芽球コロニーは有意な増加を認めた(TBR184:13.3±3.5versus20.0±2.0;P<0.05、TBR31-2:7.5±3.1versus13.5±2.6;p<0.05)。 以上より、骨髄間質細胞においてTN-Cの発現が赤芽球造血に関与している事が示唆された。
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