本研究ではAML患者より採取した白血病細胞一個一個のテロメレース活性を生きた細胞のままで予測するために、レンチウイルスベクターとフローサイトメトリーを用いたhTERTプロモーター活性の測定法を開発した。さらに、この方法により高いテロメレース活性を持つと考えられた白血病細胞の性状や動態の解析を試みた。 フローサイトメトリーを用いて測定したhTERTプロモーター活性が、TRAP法で検出した内因性テロメレース活性と相関するかどうか検討し、イマチニブによるK562細胞のアポトーシス誘導系およびATRAによるNB4細胞の分化誘導系において、hTERTプロモーター活性は内因性のテロメレース活性と良く相関した。サイトカイン(+/-)で培養したAML細胞のhTERTプロモーター活性(Venus発現強度)は幅広くほぼ一峰性であり、hTERTの発現は白血病細胞集団において連続的な分布を示すことが示唆された。また、これらのAML細胞においても、hTERTプロモーター活性は内因性テロメレース活性と相関することが示された。さらに、蛍光顕微鏡に観察すると一部の細胞は強い蛍光を発しており、テロメレース活性の階層性が示唆された。3例の臍帯血CD34陽性細胞と19例のAML細胞を対象にhTERTプロモーター活性の測定を行った。前者は、無刺激でのhTERTプロモーター活性が低く(MFI平均値=1.2)、サイトカイン刺激により一様に上昇した(MFI平均値5.8)。いっぽう、後者のhTERTプロモーター活性は、サイトカイン刺激の有無にかかわらず、患者間で大きな差異を認めた。AML19例のhTERTプロモーター活性の平均値は、サイトカイン(-)では臍帯血CD34陽性細胞の平均値の約2倍(2.5)であり、サイトカイン(+)では平均値とほぼ同じであった(5.7)。本研究により、患者白血病細胞のhTERTプロモーター活性を単一細胞レベルでモニターすることが可能となった。そして、白血病細胞集団にはhTERTプロモーター活性の連続的なヒエラルキーが存在することが判明した。大部分の症例ではサイトカインに反応してhTERTプロモーター活性が上昇したが、一部の細胞はサイトカイン(-)でも陽性であり、これらの細胞が白血病幹細胞に該当するかどうかが注目される。
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