1.c-myc+EJ-ras遺伝子導入細胞(MR5とMR8)のK選択による多剤耐性機構の解析:K選択による多剤耐性機構の解析を進め以下の結果を得た。DXRやVCR耐性に関与するMDR1b/P糖蛋白の発現亢進については、機能的にも多剤耐性に寄与していることを示した。発現亢進の機序としては、DNA脱メチル化や遺伝子増幅ではなく転写因子NF-YAの発現亢進を介した機序が示唆された。一方、Ara-C耐性に関与しては、cytidine deaminaseの高発現やENT1の発現低下が一部の株で確認された。また、K選択による細胞増殖速度の低下が細胞周期特異的抗がん剤の感受性低下に関与していることを示した。よってK選択による多剤耐性には複数の機序が関与しているが、いずれも臨床で観察される現象であることから、このモデルが難治性腫瘍の解析に有用であることが示唆された。 2.K選択によって選択される標的遺伝子の探索:K選択細胞からretroviral vector (pMXI)を用いてcDNA libraryを作成し、親株細胞MR8に感染させてrとK選択を行って各選択下での標的遺伝子の探索を行った。その結果単離した14-3-3σ遺伝子が、r選択後細胞ではDNAメチル化による発現抑制を、K選択後には14-3-3σ遺伝子上流のCpGの完全な脱メチル化による発現亢進をしていることを見出した。このメチル化や脱メチル化には可塑性と不可逆性が観察され、in vitroの腫瘍化モデルにおけるクローン選択にDNAメチル化が深く関与していることが明らかとなった。以上から、このモデルは腫瘍化におけるエピジェネティクスの解明に有用なモデルと考えられる。
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