成人T細胞白血病(ATL)は極めて悪性の白血病であるが、その発症はヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染によって引き起こされる。また、その発症にはHTLV-1感染細胞中に生じる複数の宿主遺伝子変異が関与している。我々は、転写因子NF-kBの活性化がATL発症に関与することを報告してきた。NF-kB活性化能を指標とした発現クローニング法により、ATL細胞からNF-kBを活性化する遺伝子の分離を試みた。分離された遺伝子の1つはCD30であった。実際にCD30を過剰発現することによって、NF-kBの活性化が観察された。調べた限りすべてのATLに由来する細胞株においてCD30の高発現が検出された。また、その発現量はHTLV-1が感染していない細胞株よりも極めて高かった。CD30の発現は一部の(12.1%)ATL患者の白血病細胞においても観察された。従って、CD30の過剰発現が一部のATL発症に関与することが示唆された。この発現クローニング法により最も高率に分離されたのは、N端を欠失したNIK(NF-kB inducing kinase)遺伝子であった。すなわち、N端を欠失することにより、NF-kBに対する恒常的な活性化能を獲得したことが推定された。あいにく、この欠失はライブラリー作製時のアーチファクトであり、ATL発症に直接関与する可能性は低いと考えられた。しかしながら、これらの結果はNIKおよびNIKを介したNF-kB活性化経路が発がんに関与する可能性を示した。
|