研究課題/領域番号 |
15591000
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小嶋 哲人 名古屋大学, 医学部, 教授 (40161913)
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研究分担者 |
松下 正 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (30314008)
高木 明 名古屋大学, 医学部, 助手 (30135371)
山本 晃士 名古屋大学, 医学部附属病院, 助手 (90362251)
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キーワード | ストレス / TF(組織因子)発現 / 老齢 / 肥満 / 抗TNF-α抗体 / 加齢 / in situ hybridization法 / 血栓傾向 |
研究概要 |
昨年度は、拘束ストレスによりin vivo PAI-1発現が組織特異的、加齢依存的に著明に増大し、特に脂肪組織において顕著で、これが全身的な血栓傾向に寄与すると推測されることを報告した。さらに、老齢個体でも、血中・組織におけるPAI-1発現増加が組織微小血管における血栓形成のひとつの原因となっていると考えられることも併せて報告した。 今年度は拘束ストレスによるにTF(組織因子)発現変動解析を行った結果、TF mRNA発現量の有意な増加を認め、これは老齢マウスや肥満マウスで特に顕著であった。一方、ストレス負荷前に抗TNF-α抗体を投与して非投与群と比較した結果、投与群はストレス後のTF mRNA発現増加が腎臓や脂肪組織において約50%抑制された。さらに、in situ hybridization法によるTF mRNA発現の局在解析では、腎尿細管上皮細胞、小腸絨毛内の平滑筋細胞、血管平滑筋および外膜細胞、脂肪細胞などに発現増強を認めたが、血管内皮細胞では増強を認めなかった。また、組織学的な検討により、20時間拘束ストレスを負荷した老齢マウスでは、腎糸球体内や脂肪組織における微小血管内に血栓の沈着を認めたが、若年マウスではいずれの組織においても微小血栓沈着は認められなかった。 すなわち、拘束ストレス負荷によってin vivoでのTF発現は組織特異的、加齢依存的に有意に増大し、この変化が全身的・局所的な血栓傾向に寄与していると推測された。老齢個体や肥満個体では、主として腎臓や脂肪組織でのTF発現増加が、組織内微小血管における血栓形成のひとつの原因となっていると考えられた。また、ストレス負荷により誘導されるTF発現は、一部TNF-α依存性である可能性が示唆された。ストレス誘発性の血栓傾向の背景には組織特異的なTFの発現増加があると考えられ、この発現制御が血栓症予防のカギとなることが推察された。
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