研究課題
基盤研究(C)
細胞の増殖・分化機構は厳密に制御されており、その制御因子として液性因子(cytokine)からの刺激伝達系は非常に重要である。stem cell factor (SCF)は正常造血幹細胞の分化・増殖に必修な因子であり、その刺激は受容体であるKITのリン酸化を介しておこなわれる。一方、多くの白血病細胞[特に急性骨髄性白血病;acute myeloid leukemia (AML)]はその細胞表面にKITを発現しており、KITを介した刺激伝達系が白血病細胞においても重要な意義があると推測されうる。そこで急性白血病細胞におけるc-kit遺伝子異常を検索し発癌機構および分子標的療法の可能性につき検討した。AML患者(87例)より骨髄中の白血病細胞のc-kit遺伝子発現とその塩基配列を検索した。c-kit遺伝子はkinase domainであるexon 11、exson 17に関して検討した。すべての症例においてexon 11の遺伝子異常はみられなかったが、7例においてexon 17部位にAsp816のpoint mutationを認め、すべて染色体異常であるt(8;21)(q22;a22)をもつものであった。これらのc-kit遺伝子異常をもつ細胞ではSCF非存在下においてKITのtyrosine kinaseが恒常的にリン酸化されていた。c-kit遺伝子異常はt(8;21)AMLにのみ見られたことから、この異常を持つt(8;21)AML(7例)の細胞学的特性につき異常を持たないt(8;21)AML(36例)と比較検討した。遺伝子異常を持つAMLでは著明に白血球数の増加がみられた。初回の寛解導入療法後の寛解率は遺伝子異常を持つ例において低い傾向があったが有意差はなかった。治療関連における検討においてc-kit遺伝子異常をもつt(8;21)AML例では著明に不良であった。また、c-kit遺伝子異常であるAsp816HisをSCF依存性白血病細胞(Mo7e)にレトロウイルスを用いて遺伝子導入したところ、SCF非依存性に増殖するのみならず、著明な増殖能を獲得した。以上より、急性白血病におけるc-kit遺伝子異常はt(8;21)AMLに特異的な異常であり、この種の白血病発症と深い関連がある可能性が示唆された。また、遺伝子異常を持つt(8;21)AMLは持たないt(8;21)AMLと比べ明らかに細胞学的特性が異なっており、独立した疾患である可能性が推測された。また、この細胞遺伝子学的差異を基に予後、治療法を検討することが個々の治療成績を向上させるために重要であると考えられた。
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